親父とカレー

 カレーは子供の食べ物らしく、親父が夕食の食卓にいる時にはカレーは出てこなかった。もっとも小さいころは、そもそも親父と一緒に飯を食うのは頻繁とは言えなかった。
 子供の食事も終わり、仕事から親父が帰ってくる。例のごとく、親父はビールを取り出し、台所でつまみを探す。残ったカレーを見つけると、唯一親父が出来る料理法であるかもしれないレンジであたため、テレビの前にビールと並べてセッティング。時代劇にチャンネルを合わせ、ご飯にもかけず、ルーだけをスプーンで美味そうに食いながら、ビールを飲んでいた。カレーが嫌いなのか、それとも子供と一緒にカレーを食べるのが照れくさかったのか。未だに分からない。
 私は子供の癖にあまりカレーが好きではなかったから余計に分からなかった。

 出張帰り途中でカレーを食べた。そもそもカレーを食べながらビールが美味しいのか、理解に苦しむ。ビールセットを頼んで美味しそうにカレーを食べている人をチラリと見ながらカレーを頬張る。お米のご飯を食べながらのビールは不味かろう。

 未だに晩酌をしない私はしばらくは、その訳が分からないのだろう。

 すでに記憶にある親父の年には遠くはない。